Jean: Rolling Apple
(続き)
彼女に林檎を持たせてみた。
薄暗い窓辺。夕暮れの光を浴びている。私の頭の中では Farewell Angelina を歌う Joan Baez の声が響いていた。
Call me any name you like
I will never deny it
とか
There’s no need for anger
There’s no need for blame
というような歌詞を、何度もなぞり書きするように繰り返していた。
あれこれ弄くりまわしている内に、膝の上に載せていた林檎は転がり落ちてしまい、窓の桟の所で止まった。
Joan Baez が前述の歌をレコーディングした1965年頃、アメリカの大統領は Lyndon Johnson で、日本の首相は佐藤栄作だった。一つの時代が長く続いたように感じた。退陣表明の記者会見では新聞記者を追い出して、たった一人、テレビカメラに向かって話していた。その後は田中角栄の時代。アメリカはRichard Nixon 、Gerald Ford と続く。
遠い昔なのに、何だか昨日のことみたいだ。
人間の一生なんて短いな。