Elica: Sakura shell
(続き)
"Elica: Longing for pagan beauty" と同日の撮影。こちらのシリーズではペイズリー柄の布が目立たない。代わりに、彼女の耳朶に目が行く。桜貝のようだと思ったのは、鎌倉由比ヶ浜のビーチコームの話題を目にしたからか。
Beach combing 。アクセサリーやインテリア雑貨の類いを、海岸で拾ったものを利用して作るまでは、なるほどなぁと思っても、それが売り物になると聞くと、彼我の違いに驚く他はない。
貝殻拾いをした記憶は遥か昔。若い父や母の姿まで一緒に思い描く。
烏賊の甲や角の取れた丸い小石と一緒に、桜色の小さな貝を拾ったのは須磨の海岸だったのだろうか。滑らかな内側を指でなぞり、光にかざして見たように思う。しかし、拾ったものを持ち帰った記憶がない。家に帰ってから、二歳下の妹が貝殻で遊んでいた光景は実際の記憶なのか、或いは空想なのかも判然としない。
淡い桜色が好きだと思うようになったのは家を出て、働くようになってから。柔らかくて繊細な美しさに惹かれる。男には縁のない色だとされるのが、歳を重ねるにつれて愈々受け入れ難く、人は人であり、私は私だと思うしかない。